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2023.01.19
あけましておめでとうございます。ついこの間まで夏休み気分でしたが、もうお正月休みです、というと、休みのことばかり考えている学生のようですが、社会人の方にこそ関わりのある「有給休暇」について法改正も含めて一度確認してみましょう。最後は「労務監査」のすすめminiで自社の状況をチェックしてみてください。今年もぐんま税理士法人ならびにビジネスブレイン株式会社を、よろしくお願いいたします。
社労士の仕事について20年、中小企業の様々な労務の相談を受けてきて、労働者と使用者の間で労働法や法改正についての情報量や新しい制度に対する適応力の格差が大きくなってきていることを感じます。労働者側は、若年層が多いので、インターネットを駆使して常に様々な情報を収集しています。例えば、以前は、出産育児を控えた社員への資料提供や説明を依頼されたものですが、今では、こちらが説明するまでもなく社員側がよく調べていて、いつから休業に入れるのか、出産育児にまつわる給付金にはどんなものがあるのか、事務手続きに必要な添付書類の準備など自分で進めており、処理がとてもスムーズになりました(社労士業の危機が迫っているのを感じます)。
出産育児という臨時のイベントについてもこのような状態ですから、日常的な問題である労働時間や給与計算、そして年次有給休暇に関しても自分の『権利』を実によく理解していて、法律を盾に社内制度の不備に突っ込みを入れてきます。対する使用者側は、社長とは言え本業だけで手いっぱいで疲弊しており、労務管理については関心が薄く、情報収集する余裕もツールもなくて意識改革もされていない、ということが多いように見受けられます。トラブルが発生してから、「知らなかった」では済まされません。労働者側とのギャップを埋められるよう労働関係の情報にアンテナを張っていただきたいと思います。
ここで恒例の労務監査のすすめminiを行いたいのですが、その前段として一つ、質問いたします。
▢ 会社に有給休暇制度はありますか?
これにはさすがに「はい」と答えていただきたいところです。数年前くらいまでは(いや、今でも)、うちには有給休暇はないよ、と豪語する社長さんもいました。ただ、そう言うのには2種類あって、1.休んでいる者に給料を払うような余裕はない、と言い切ってしまうタイプと、2.有給休暇何日とか決めていないけど、うちにはそんなルールは必要ない、休みたい時には休んでもらっていいから、と一見太っ腹で情が深い経営者のように見えるタイプ。後者はありがたいようですが、社長の気分次第で休暇をもらって恩を着せられるよりも、ルールの中で利用したいと思うのが、労働者側の言い分でしょうね。
それでは労務監査本編にまいります。以下のすべてに「はい」と回答できますか?
▢ 入社初日から6か月経過日に、10日の有休を付与していますか?
▢ パートタイマー等の非正規社員にも有休を付与していますか?
細かくいうと、入社初日から6か月経過時に、全所定労働日数の8割以上出勤していた場合、というただし書きがつきます。また、非正規社員に対しては、その所定労働日数に比例した日数の有給休暇の付与が必要です。
その所定労働日数に比例して、とは、たとえ週1回の勤務だったとしても、6か月経過したら、1日分の有給休暇を付与しなければならないということです。
出典:厚生労働省ホームページ
10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員がいる場合
▢ 年次有給休暇の付与(基準日)から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得させていますか?
▢ 時季指定をする場合、本人の希望を聞き、なるべく本人の希望に沿った日を指定していますか?
さらにステップアップした設問です。2019年4月の法改正でしたが、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。なぜこのような法律ができたのか意味不明ですが、強制しないと休みを取らない人が対象だと考えてください。そういう人たちの休暇日数を管理し、年5日の取得を義務付ける必要があります。有給休暇を付与してから数か月、休暇の申請がなかったら「休暇取ってね」だけではなく「休暇取るならいつ頃がいいの?」と希望を聞いて決めてください、という主旨です。
年次有給休暇を計画的付与によって取得させている場合
▢ 計画的付与によって年次有給休暇を取得させるために、労使協定を締結し、就業規則にその旨を記載していますか?
とは言っても、有給休暇を個々に管理して取得促進するのは面倒、という時には『計画的付与』です。年末年始やお盆の時期など、公休日でなく有給休暇として年間合計5日以上を設定してあれば、時季指定をする必要はありません。ただし、導入には、①就業規則への記載、②労使協定の締結(労働基準監督署への提出は不要)などが必要です。また、所定労働日数の調整や、有給休暇を持たない社員(入社後間もないなどで、有給休暇がまだ付与されていない場合や、すでに私用で消化しきってしまった場合など)への対応など、導入前に検討しておくべきこともあります。
▢ 年次有給休暇の管理簿を作成していますか?
この1,2年で労働基準監督署のチェックポイントの一つとして欠かせないものになりましたので、ぜひ整備しておいてください。
給与計算ソフトなどから自動で出力できますが、休暇取得の都度、請求の種別などを入力しておく必要があります。
以上、本当はインターネットに疎い世代の方にこそ読んでいただきたい内容となってしまいました。
自社の有給休暇制度を見直しして、新制度で新しい年をスタートしましょう。ぜひビジネスブレインにご相談ください。ただいま、労務相談キャンペーン実施中です。